福岡地方裁判所 昭和46年(ワ)808号 判決
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〔判決理由〕一、抵当権の実行に基き抵当物件の競落人によりその競落代金の納付がなされ、最早や競売による、より高価な競買人の出現の余地もなくなり従つて抵当権者がより高額の優先弁済を受ることができなくなつた場合は、抵当権者の民法第三九五条但書による短期賃貸借の解除請求はその利益を欠くに至つたものとして、請求棄却を免れないものと解するのが相当である。ところで<証拠>によると原告は別紙目録記載の物件につき昭和四五年一一月一〇日抵当権実行の申立をし、本訴提起(昭和四六年七月二六日)後の昭和四六年八月二日白ら競落し同年一二月一三日右競落を原因とする所有権取得登記を得ていることが明らかであるから、原告の請求原因第一の抵当権に基く短期賃貸借の解除請求は訴の利益を欠くに至つたものというべくその余の事実について判断を加えるまでもなく失当といわねばならない。 二、そこで請求原因第二の本件賃貸借は通謀虚偽の意思表示による無効である旨の原告の主張について判断する。
被告らは右主張に対し何等の答弁をなさないが、請求原因第一に対する答弁の趣旨から原告主張の右請求原因事実を争つているものとみられるので審案するに、<証拠>によれば請求原因第2項(一)ないし(五)の各事実が認められ右認定を覆えすに足る証拠はない。これらの事実によれば被告らの本件契約は原告の抵当権実行を妨害する目的で被告らの間で通謀のうえ仮装したものであると推認するに十分である。そして被告石本の主張する事実を窺わせる証拠は何等存しない。そうだとすると本件賃貸借は通謀虚偽表示による無効のものであるからその仮登記も結局実体のない無効の登記といわねばならない。
以上の事実によれば原告の本訴請求は被告田端、同蔦野、同桐野に対し本件仮登記の抹消登記手続を求める限度において理由があるのでこれを認容し、被告らに対し、本件賃貸借契約の解除を求める部分は本来無効なものでその解除を求めるに由ないから失当として棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条、九三条を適用して主文のとおり判決する。
(松島芳敏)